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最高裁判所第二小法廷 昭和29年(オ)490号 判決

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人牧瀬幸、同勝本正晃の上告理由について。

第一点、論旨前段引用の原判示は、所論の所有権移転行為の虚偽仮装なることを主張するには、これが仮装ならば本件不動産の所有権が現に上告人に帰属すべき関係にあることを主張立証すべきだとしたのではなく、上告人が本訴において求めるところは、本件不動産の所有権の確認並びに所有権移転登記の抹消を求めるにあるが故に右の主張立証が必要だとしたに過ぎない。又、被上告人が論旨後段掲記のような主張をしたからといつて、所論の譲渡行為が当然虚偽表示とならざるをえないものではないのみならず、原判決は所論の譲渡行為が虚偽表示でないと判断しているわけでもない。されば論旨前段後段いずれも理由がない。

第二点及び第三点仮りに、所論のように上告人が前主松五郎に対し所有権を主張し移転登記を求め得るにしても、被上告人が松五郎の相続人として同人の地位を承継したという事実は、原審において全く主張立証のなかつたところであるから、かかる事実に基ずき被上告人に対する所有権確認及び移転登記の請求の認容せらるべきことを主張する論旨は採用できない。

第四点 通謀による虚偽の意思表示は必ずしも双方行為に限らず相手方ある単独行為についても成立し得るものと解すべきであるから、論旨中所論の契約解除を虚偽表示と断じた原審の判断を非難する第一は理由がない。その他の論旨は適法になされた事実認定を非難するに帰し採用できない。

第五点 論旨は原審で主張立証しなかつた事実若しくは原審認定の事実と相容れない事実を前提として原判決を難難するものであつて採用できない。

よつて、民訴三九六条、三八四条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 池田克)

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